2011年3月11日 | 東日本大震災(工場兼事務所の建物が倒壊、火災が発生) |
2011年4月15日 | 市内の工場を借り受け、一部を除いた生産ラインを再開 |
2011年6月6日 | 全行程の生産を再開 |
2013年2月18日 | 本社を再建し、本拠地での操業を再開 |
福島県須賀川市。国道4号沿いに本社を置く当社は、震災によって3階建ての工場兼事務所が倒壊しました。
幸いにも、敷地内にいた従業員約130名は一人の重傷者もなく無事に避難することができました。
この経験を広く伝えるため、ここにその時の状況を記します。
2011年3月11日 午後2時46分、東北地方太平洋沿岸部で地震が発生。
ほどなくして本社を構える福島県須賀川市にも揺れが襲ってきました。
その時期、年明けから小さな地震が頻発していたこともあり、揺れ始めのほんのわずかな時間は「ああ。また地震か」と半ば慣れた感覚もありました。
しかし、その直後。揺れは震度6強を観測することになる激震となり、事務所の者はあわててデスクやテーブルの下に逃げ、工場の者は機械の下のスペースへ身を預けました。
強い揺れは5分間も続き、当社建物は南側から倒壊を起こしたのです。
(後の調査では、建物自体の強度の問題ではなく、地盤のひずみにより基礎にダメージを受けたため倒壊が起きたと考えられます)
建物の中には52名の従業員がいました。
倒壊により停電となったため、目の前も見えないほどの暗闇。
一部の幹部社員が自前のペンライトなどでかろうじて視界を確保し、周りの従業員に声をかけ、けが人の有無を確認。
そして脱出口を探し始めました。
本来あるはずの1階へ続く階段はすでになくなっていましたが、倒壊しなかった隣の建物への連絡通路が生きており、残った従業員は這うようにそこまで移動し、かろうじて脱出することができたのです。
1階の工場では落ちてきた天井を工作機械が受け止め、そのわずかなスペースから脱出することができました。
2階3階は梁が落ち押しつぶされるような状態でしたが、オフィスフロアという事もあり、頑丈な机やキャビネットがスペースを作りました。
結果的に、普段の業務で使用している機械や備品たちが従業員を守ってくれたのです。
毎年行っている、火災を想定した避難訓練も功を奏しました。
現実感のない状況の中でも、従業員たちは決してパニックにならず助け合いながら冷静に行動できました。
従業員の避難後、倒壊した建物では火災が発生し、翌朝まで消火活動が続けられました。
震災直後の県内は、物流も滞り、スーパーやコンビニには空の商品棚だけが並びました。移動するにもガソリンも購入できない状況が続き、今後への不安と多くのものを失った焦燥感に包まれていました。
しかし、当社は一刻も早い生産再開に向けてすぐに動き出しました。
当社が部品を製造できなければ、その先にある製品も生まれません。製造業を営む以上、ものづくりの繋がりを途切れさせることは許されないのです。
まず、新たな生産のためセイコーインスツル株式会社様のご厚意により、市内にある現在は稼働していない工場を借り受けることができました。
次に、金属加工に不可欠な機械を運び出す必要がありました。
しかし、震災からひと月も経たない時期、移設の専門業者は手一杯です。それを待っていては再開が遅れるのは目に見えていました。私たちは、自分たちの力で移設することを決めました。
震災からひと月あまりの4月15日。
一部を除き、製造ラインを再開することができたのです。
およそ300台の機械たちは、修理が必要なものも多くありました。
これもできる限り自分たちで修理を行いました。
そして、6月15日。
全工程の生産を再開することができました。
操業再開までには、次々と大きな難題にぶつかりましたが、あれほどの大きな災害にもかかわらず、従業員が全員無事だったこと。これが、もう一度やり直そうという強いエネルギーになりました。
今、震災前よりも強い結束を感じます。
しかしながら、まだ震災から復旧したに過ぎないとも思っています。
以前の状態に近づくことはできましたが、ここからが本当の復興への挑戦と考えています。
そして何より、再建のために多くの方々からのご支援と励ましの言葉を頂いたこと、この御恩を忘れずに、これからも従業員一同、新たな気持ちで再出発する決意です。
「もう戻れないかもしれない」
そう思ったあの日から、約2年。
平成25年2月18日、本社を再建することができました。
数多くの方々のご支援と社員の奮闘に心から感謝するとともに、新たな一歩を踏み出す弊社の発展と成長が、地域の皆様への恩返しと考えております。
デフレや内需停滞が続く中にありますが、得意とする精密冷間鍛造と切削・研磨の技術を、成長分野である医療へ活かすべく取り組んでまいります。
今後も変わらぬご支援とご指導を賜りますようお願い申し上げます。